|| 「踊る金狼亭」TOP記録帳>CWエッセイ:第42回

1999年から2006年ごろにかけて行われていた企画「CWエッセイ」のために書いたものです。
「CWエッセイ」はシナリオや素材の作者にCardWirthへの熱い想いを自由に語ってもらうという企画で、書いた人が次の執筆者を指名するリレー形式でした。最終的に96人分が集まり、たれぱんにゃ様のサイト『Landscape of CardWirth』(途中でHN・サイト名変更→M_Ayumi様『CardWirth Anthology』)に掲載されていましたが、残念ながら現在、エッセイコーナーは“Not Found”です。情熱・内容とも他の方に及ばない気がしますが、過去の記録として自分の回を公開します。


私のCardWirth(以下、CWと略す)歴は、実質的に約4か月程度です。
こんなド素人でも簡単にシナリオが作れるところが、CWの魅力の1つだと思います。
プログラム知識も要らないし、画像や音楽素材は無料で配布しているサイトが数多くあります。
最低、「こういう話を作ろう!」というアイデアさえあれば良いわけです。

これまでの4か月程を、私はほとんど自分でシナリオを作ることに費やしました。
恐らく多くの人が既存のシナリオを遊ぶところから入るのだと思いますが、私はGroupAskさん制作のシナリオをエディタで開いて見ているうちに、すっかり作る方に興味が向いてしまいました。
それでエディタヘルプの「シナリオ作成講座」を見ながらあれこれと試したのですが、実際やってみると、シナリオを作るのは意外と簡単そうに思われました。
今から思うと、この「意外と簡単に作れそう」というのが罠だったのかもしれません。
いったん自分でシナリオを作り始めた後は、CWから離れられなくなりました。

※※※
CWのユーザーの中で、自分でシナリオを作っている方は数多いと思います。
面白いシナリオを作って皆を楽しませようと、日々努力している方もおられるだろうと思いますが、私はとてものこと、そこまでの域に達してはいません。
私がシナリオを作るのは、第一に「自分が楽しいから」です。
物語を考え、登場人物を配置し、自分が考えた事をイベントとして表現する過程は面白いです。
それだったら別にCWじゃなくても、小説もどきでも書いて自己満足していればいいと思われるでしょうが、CWにはCWにしかない利点があります。
CWの利点、それはただ決まった筋に従って文章を追っていくだけではなく、遊び手側にある程度、行動や選択の自由があることです。ただ読まされるだけの小説ではなくて、主体的な意志を持って参加できるゲーム。ここのところが、どうやらツボだったようです。
で。せっかく遊び手側が参加できる形態なのだから、どうせなら遊び手側にも楽しんでもらえるといいなあ……と、それが今のところの自分の制作方針です。

一応、シナリオ作りの際の目標というものがあったりもします。それは、「目指せ、暇つぶし」。 誤解のないように説明しておきますと、私が暇つぶしをするというのではなくて、遊ぶ人に、最低「まあ、暇つぶしぐらいにはなったよ」と言ってもらえるレベルのものを作る、ということです。
自作シナリオを人に遊んでもらうという事は、その人の貴重な時間を奪う事です。せめて「暇つぶし」程度に得るものがあるように……というわけで。目標低いですね、自分。
いや、もちろん「面白かった!」と思っていただければ、それにこしたことは無いです。
最低限の目標は「暇つぶし」なのですが、面白くする努力というのも、もちろんやりはします。
ただ、この「面白くする」というのは、なかなかに難しかったです。
私自身が面白いと思っても、遊ぶ立場の人が面白いと思うかどうかは全く不明だからです。
作ったシナリオを公開して2か月半程度経った今でも、面白かったのかどうかは分からないままです。恐らく、作成者本人である私には、永久の謎として残されるに違いありません。

※※※
この文を書いていて、CWエディタは「広き門」だったと、改めて思います。
シナリオ作成は全く初めてだった私でも、単なる思いつきからシナリオが作れてしまいました。
その思いつきたるや、「ん~……盗品を取り戻す、なんていう依頼はどうだろう?」程度のものだったので、いかに「門」が大きくて広かったか、分かろうというものです。

私はややこしい事を考えるのが非常に苦手なので、まずはプロットメモやら人物設定書やら物語内のタイムテーブルというようなものを作って、内容を整理するところから入ります。
そうしないと、考えた事を忘れるからです(自分で考えた事なのに、ですね)。
最初は、そのメモ類に従って最低クリアに必要な道筋を作ります。
とりあえずクリアできるところまで作ったら、今度は脇道的要素を付け加えます。

そうやってシナリオを作り上げていく過程には、山あり谷あり、決して平坦な道程ではありませんでしたが、シナリオを作る面白さの前には、多少のキツさなど吹っ飛んでしまいます。
たぶん、私以外のシナリオ作家さんたちも、そうなのではないでしょうか?
恥ずかしながら、私はギルド登録作品は最近になってやっと一作やったきりなのですが、あれほどたくさんのシナリオが公式ギルドに登録されているところを見れば、広き門に魅了されてシナリオ作成の道に入り、面白くなって完成させた人がかなりの数存在するということでしょう。
それにしても、皆我慢強いものです。いや、CWの魅力が、それだけ大きいということでしょうか。

白状しますが、面倒くさがりな私は、作成の最終段階・テストプレイで挫折しかかりました。
何かしら新しい物を生み出していくイベント作成段階と違い、単純作業の繰り返しと不要要素の削除に徹するテストプレイには、かなり精神を擦り減らされました。
それでも、だからこそ最後の急勾配を登りきって完成した時の達成感は大きかったです。
「できたぞぉぉぉぉ!!」
と、思わず万歳。他人には見せられない姿ですな。

しかし、実に厄介なゲームを知ってしまったものです(笑)。
シナリオ作成のために睡眠時間を削ったり、気付けばネタを考えていたり。
ヘルプを読む事や、某有名製作技術系サイトでの情報収集で余暇を使いきったり。
まだもうしばらく、私のCW熱は冷めそうにないです。

(2001.11.09)


ちなみに、これを書く過程で他に色々書いた名残が、雑文綴に残っています。
本格的にやり始めてすぐの頃ですね。あれから○年、遊ぶより作るほうに大幅に偏っている傾向は、今も変わりません。作ったものを勢いで表に出さないだけの慎重さは、一応獲得した……ように思います。
(※英数字を半角に統一するなど一部見た目的なところを変更しましたが、文章の内容は変わっていません。)