|| 「踊る金狼亭」TOP札楽亭>(2)著作権のこと


あなたの作品は、100%自作ですか?
シナリオ作成では、たぶん数多くの素材にお世話になったと思います。
素材やツールでも、一部に人様の作品をお借りすることがあるかもしれません。

ご自身の作ではない部分については、通常、それを作った人が権利を持っています。著作権というヤツです。
何となく難しそうなイメージですが、扱いは大雑把に言って以下2点にまとめられます。
  1. 利用に際しては、著作者の意思に従う。
  2. 著作者の意思が明確でない時は、ひとまず実行を保留して、ご本人の意思を確認する。
なお、場合によっては意思確認を行うべき相手が複数になることもあります。
(※このページの内容は、作ったものを他人に向けて公開する事を前提としています。)

※※※
以下、このページのメニューです。
著作権について話す際の用語としては「著作者」の方が正確ですが、言い辛いし堅苦しいので、このページ内ではだいたい「著作者」の代わりに「作者」を使っています。あらかじめご了承ください。

なぜ、「分からない時は保留」か?

作者の判断が示されていない段階では、許可・不許可の両方の可能性があります。
何も書いていないのは、作者がそのような使われ方を想定していないだけかもしれません。

はっきり確認しないまま実行すると、何が問題か──
逆に考えれば、しっかり作者の許可を得られれば、実行に何の問題もなくなります。
まずは、作者の方が問い合わせを受け付けているか調べるところからです!
そして問い合わせが出来る場合には、迷わず問い合わせする事をお勧めします。
問い合わせできない状態だったり、断られたり、回答が無くても、別の方法を探すことで先に進めます。

※※※
「私は気にならない」「私は嬉しい」→だからきっと作者も同じ、という自己判断は非常に危険です。
人間は色々ですので、「私は気になる」「私は嫌」な人も居ます。

[▲上へ]

素材などの入手は、オリジナルの配布元から

基本的に、作者のサイトやブログなど、オリジナルの配布元から入手します。
それ以外の場所からの入手は、作者が特に許可していない限りNGです。

それ以外の場所からの入手とは、 のような入手方法を指します。
作者の許可がない場合は無許可で複製利用したことになり、著作権の侵害にあたる可能性があります。

再配布されているものは、内容が古いことがあります。
作者が第三者による配布(再配布)や抜き出し利用を許可している場合も、オリジナルの配布元が生きている間は、そちらで現在の利用規約を確認し、最新版をダウンロードすることをお勧めします。

オリジナル配布元が消失し、再配布しか入手方法がない時は

使う前に、作者の許可を受けて再配布されているものか確認して下さい。
許可されているか良く分からないもの、明らかに無許可のものは利用を控え、作者に直接問い合わせてください。

[▲上へ]

現在では入手できない素材について

入手できなくなった素材(画像・効果音・BGM・リソースシナリオ等)の利用では、色々と問題が起きやすいものです。
作者に公開を続けたくない・続けられない事情があり、自らの意思で公開を停止した可能性があります。
利用規約などを第三者が確認できなくなる事によって、利用の正当性を証明し辛くなるといった、自分の身を守る上での危険も発生します。

素材は、現在入手可能な作品の中からイメージに合うものを探した方が無難です。
カードワース向けの素材は今でも新しいものが発表され続けているし、広くゲーム作成向けという事ならさらに数多くの素材サイトを発見できると思います。

利用規約に公開停止後の扱いが書かれている時

現在の利用規約に記述があれば、それに従ってください。
過去の利用規約(例えば、サイトが消える前のキャッシュや過去に保存した文書など)に書かれている場合は、その後、今までに規約が変わっている可能性があります。

公式的なガイドラインについて

カードワース愛護協会は、2013年から公式ファンサイト内に「入手不可能となったシナリオ素材について」の項目を設けています。望ましい対応が説明されていますので、ぜひリンク先をご確認下さい。
文章中の「シナリオ素材」には「CardWirthでのみ用いる事が出来るデータ」が含まれており、画像・効果音・BGMだけでなく、他のシナリオからインポートしたカードも考慮に入れた指針と思われます。

[▲上へ]

インポートシステムの落とし穴(シナリオ作者さん必見)

まず最初に、「インポート」とは何でしょうか。
シナリオ作成ツールの標準機能の為あまり意識されていない面があると思いますが、インポートとは、『シナリオAから別のシナリオBに、内包する素材ごとカードデータを複製する行為』です。

著作権法では、「著作者は、その著作物を複製する権利を専有」すると定められています(複製権)。
そのため、カード本体と含まれる個々の素材について、それぞれ作者から複製の許可を得る必要があります。全員の許可が得られていなければ、そのインポートは不正利用です。

また、インポートの際、カードに関連する作者情報(特に素材作者)が抜け落ち易く、それによって氏名表示権の侵害(=書くべき作者情報を書いていない)という別種の問題を引き起こす恐れがあります。
元のシナリオの情報欠落が引き継がれたり、写す時に書き忘れたりといったパターンがあります。

対策

[▲上へ]

不特定多数に対し、自作シナリオの再配布やインポートを許可する方へ

前項「インポートシステムの落とし穴」で、インポート=複製だという話をしました。
再配布も手元にあるオリジナルをサーバ上にコピーして公開するため、やはり複製にあたります。
また、どちらもWeb上で配布を行うと、自動公衆送信が行われている状態になります。
このため、無許可で行うと、複製権と公衆送信権の侵害がダブルで成立してしまいます。

作品が100%自作の場合は、再配布やインポートの許可は、あなたお一人の判断で可能です。
では、素材やインポートしたカードなど、他人の作品が含まれている場合は?

特に条件をつけずにこれらを許可した場合、『あなたが、そこに含まれる他人の作品(=自分に権利が無いもの)も含め、一括して自分の名前で複製や自動公衆送信を許可した』ことになります。

いやちょっと待て? そうです、自分に権利がない部分は、勝手に扱いを決められません。
問題を解決する方法は、3つほど考えられます。
  1. 100%自作する。
  2. 関係者全員の合意を取り付けた上で許可する。
  3. 自作部分限定で許可する。
1番が出来る方は、ぜひ挑戦してみて下さい。これ以外で無条件許可は、ほぼ不可能です。
2番は非常に困難です。全員と交渉する手間もさることながら、1人でも連絡が取れなかったり、許可が得られなかったりすると、その時点で詰みます。

実現の可能性などを考えれば、3番目の方法を選ぶのが現実的です。
以下、もう少し具体的に……
※※※
どんな条件で許可するにしても、作者情報は必ず詳細に書いて下さい。
インポートや再配布を行う人、つまりあなたから見て利用者の方が、必要に応じて画像などの差し替えを行ったり、関係者の許可を得て必要な作者情報を正しく添付テキストに記載できるようにするためです。これができないと、あなたの作品を気に入ってくれた人が著作権法違反の罪に問われる恐れがあります。
また、発表から長期間過ぎている時など、念のため関係者のところを回り、現在の許可の有無を確認しようとする人もいるでしょう。その際、誰と誰の許可を得れば良いのか正確な情報が必要です。

まず、使用した素材の作者情報を細かく書きます。

他のシナリオからインポートしたカードが含まれている時は、それぞれについて誰の何というシナリオからインポートして、そこに使われている素材の作者は誰なのかを書いておきます。

最後に、関わった他の作者さん情報だけでなく、自作の部分は自作である事をはっきり主張しておきます。
(※いずれも素材加工やインポートなど、必要な部分については作者の許可が取れているものとします。)

※※※
インポートについて、もう少し。
[▲上へ]

無料なんだしそこまで厳しくしなくても、と思った方へ

札楽亭を正式公開した直後、記事に対するコメントを頂きました。
要約すると、以下のようになります。
・無料なら金銭的損失はありえず、無断で使われても作者は損をしない。
・作品が好きだからこそ使いたい、その気持ちも汲んで欲しい。

同じように考える方もおられるのではということで、数で勘定できない損失について少し書こうと思います。
例えば、信義の問題──使っている素材の規約上それは困る、とか。
例えば、精神の問題──自分はそういう使われ方をされたくない、とか。
そういったものです。
人間関係や精神面にダメージが発生するこれらの問題は、ある意味金銭の問題よりも厄介かもしれません。

何かを表現する行為は、作り手の心から生じるものです。
故に、配布が続くか、次の作品が生まれるかといったことは、作者のモチベーションに左右されます。
嫌な事や面倒事で心が折れて作品の取り下げや撤退に至るのは、作者と使う側の双方にとって不幸です。
「好きだから」という動機があったとしても、それで無断使用が許されるかは、作者の事情や考え方次第です。自作を気に入ってくれたと喜ぶ人も、嬉しいけど他の人に迷惑がかかるのでやめてという人も、事情がどうあれ駄目なものは駄目な人もいるでしょう。

なので、重ねて言いますが、「事前に確認しよう」です。
無断で使えなければ、その作品が好きな気持ちを無視されたということではないはず。
確認して使ってOKということになれば、何も不安はなくなります。
そして、駄目だったら潔く諦めるのもまた、好きの形のひとつなのではないでしょうか。

[▲上へ]

さいごに 〜○○は人のためならず

権利の主張も、権利の放棄も、どちらも権利者としての意思表示である事は同じです。
自分の意思を他人に受け入れてもらおうとする時、「他人の意思に従う気はないけど、私の意思は尊重して欲しい」というのでは、誰も取り合ってくれないでしょう。

相手を尊重することが、巡り巡ってあなた自身が尊重してもらえる環境を作るだろうと思います。
皆が互いに尊重し合うことで自分の意思はそこそこ守られるはずという安心感が得られれば、全体としてより作り易い環境になっていくのでは……と申しますか、なってくれれば良いなと考えています。

面倒な話に最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

[▲上へ]