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クロード 何をしてるんですか? チサトさん。」
チサト あら、クロード。ちょっとね。このエナジーネーデの歴史について調べてたのよ。」
クロード へえ〜。」
チサト ナール市長の言葉を信じないわけじゃないんだけど、一つの視点から見た情報だけじゃ、客観的な判断は下せないからね。
もっとも、ここの資料は全てネーデ人の視点から見たやつばっかりだから、やっぱり内容はかたよってるんだけど…。」
クロード それでも、全然見ないよりはマシ…ということですか?」
チサト まあ、そういうことね。」
クロード それで、何か分かったことはありました?」
チサト そうね…おおむねは、ナール市長の言ってた通りなのよね。
はるか昔、たしかにこのネーデは、銀河系内の七割の地域をその影響下に置いていたみたい。それも、極めて友好的にね。
まあ、共存させられていた側の意見がどうだったのかは、聞いてみないと分からないんだけどね。」
チサト もっとも、この辺は地球連邦もさほど変わらないんじゃない?」
クロード はは…厳しいですね。」
チサト まあ、それは置いといて、問題なのはこれからなのよ。少し面白い事に気が付いたの。」
クロード ?」
チサト 今から37億ネーデ年前…神の十賢者と呼ばれる者達が銀河系の支配を企てて、それに反対する他のネーデ人たちとの間に争いが起こった。そして十賢者達は敗れ、犯罪者として時の進まない牢屋に入れられた。」
チサト ここまではいい?」
クロード ナールさんの言ってた通りですよね。」
チサト ええ、そうね。けど、重要なのはここからなのよ。」
チサト ここにこれだけの本がありながら、不思議なことに、この事件に関しては、これ以外のことがいっさい書かれていないのよ。」
クロード どういうことです?」
チサト つまり、どの文献も多少の記述方法の違いはあるものの、この事件に関しての基本的な内容は同じだってこと。
悪い十賢者達が銀河系の支配を企みました。しかし、彼らは倒され、罰として時の進まない牢屋に入れられてしまいました…。
これだけなのよ。」
クロード そうなんですか。でも、それって不自然じゃありませんか?」
チサト ええ、常識では考えられない事よね。
こんなに昔の事件なんですもの。普通は誰か一人ぐらいは、ひねくれた解釈をするものでしょ。
何者かが事実を隠そうとして、それらを書き換えたりしない限りはね…。」
チサト …。」
クロード …。」
チサト やっぱり、この事件には、何か裏があるのかも知れないわね。」
クロード じゃあ、ナールさんが僕らをだましていると?」
チサト それはないと思うわよ。何せ、ずいぶんと古い事件だし。
ナール市長は、この事件に裏があったことすら知らないんじゃないの?」
チサト どちらにしても、これ以上のことは調べようがないわね。
資料が存在しないんじゃ、どうにもならないわ。」
クロード …。」
チサト 過去がどうあれ、十賢者がエクスペルを滅ぼし、銀河系を支配しようとしているっていう事実は変わらないわ。結局、倒すべき相手は一緒ね。」