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第二回では、なぜランティス博士はネーデを裏切り、十賢者たちを使って元々は味方であったネーデ軍を攻撃させたかについて考察しようと思う。

反乱制圧用の新兵器開発のプロジェクトリーダーに選ばれた時点では、ランティス博士はむしろ喜んでその任務についたと、筆者は考えている。
彼もネーデ人の1人なのだし、戦争中のことでもある。
祖国ネーデを守るために役に立とうという愛国心のようなものもあったろうし、国家的プロジェクトを統括する地位を名誉と思っていたかもしれない。
そういうわけで、プロジェクトの初期段階では、博士は誠心誠意、反乱軍を鎮圧するための生体兵器の開発に力を注いでいたと思われる。
ガブリエルを除く9体の素体が完成した辺りまでは、計画は何の支障も無く進んでいたはずだ。シークレット情報にも、何も事件を感じさせるような記述は見られない。
問題は、この後。

この後、ランティス博士の娘フィリアが、反乱軍のテロによって命を落とすわけだが、軍部はこのことをランティス博士に知らせなかった。
軍の判断は、ある意味正しい。彼らにしてみれば、一刻も早く生体兵器をすべて完成させ、「第一次防衛十賢者計画」プロジェクトの最終段階、すなわち完成した兵器による反乱軍の鎮圧へと進みたいわけで、そのためには、ランティス博士が娘の死を嘆き悲しんでプロジェクトに集中できなくなっては困ると考えるのは当然のことだ。
しかし、ここで敢えて言わせてもらおう。軍がフィリアの死後すぐにランティス博士に事実を告げていれば、十賢者による反乱は起きなかったであろうと。
娘の死を知った博士は嘆き悲しんだだろうが、その後娘の仇を討つべく、よりいっそう生体兵器開発に心血を注いだに違いない。

だが、娘の死は、博士に知らされることはなかった。
ある日突然、もう何日も前に娘が死んでいたことを知った時の彼の心情は、察するに余りある。
この世にたった1人の身内、最愛の我が娘が、永遠に、しかもテロに巻き込まれるという理不尽な死に方でこの世を去ってしまった。しかも、その死に目に会うことさえ出来なかったのだ。とうてい、納得できることではない。悲しみと絶望に打ちひしがれ、娘を殺した反乱軍を呪い、そして、最後にふと思っただろう。
「軍は、なぜ知らせてくれなかったのか…?」と。
ランティス博士も馬鹿ではない。なぜ軍が真実を隠したかなど、すぐに分かることだ。
軍にとっては、プロジェクトを問題なく進めることが第一。その目的のためには、自分たち父娘の情愛などというものは、塵のように些細なことだったのだ。
「利用された」…そう思っただろう。俺は生体兵器を開発するための、政府の道具だったのかと思った時、彼は混乱のうちに、自らの祖国をも呪詛したに違いない。

この時のランティス博士は、正常な精神状態ではなかったと思う。娘の死が彼の理性を一時的に麻痺させ、憎い反乱軍、憎い祖国、そして娘がいなくなってしまった虚ろな世界など、この世から消し去ってくれようと決心させたのだろう。
そして不幸なことに、彼の手元には格好の道具があった。未完成の1体を含む、十賢者たちだ。
こうして、ランティス博士は絶望が命ずるまま、自らの復讐を果たすために十賢者たちに手を加え、まずは手近なネーデ軍を攻撃することになった…というのが筆者なりの結論である。

ランティス博士については、ガブリエルとの二重性や、天使フィリアとの関連性が謎として残るが、それは次回以降で。
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