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第三回では、ガブリエルの人格が誰のものかはっきりしない矛盾について考えることにする。
ラスボス戦で戦闘中のセリフを聞いていれば、「私は人によって造られた」などと言っている。つまり、ガブリエルには、自分は誰かの手によって造られたものだという意識があったことになる。
だが、ランティス博士の娘フィリアの記憶があったり、死に際の「よくこの私を止めてくれた」というセリフから考えるに、完全に生体兵器としての思考に支配されているわけでもないらしい。
シークレット情報に、ランティス博士が自分の思考ルーチンをガブリエルに組み込んだのではないかという推測が述べられているが、その辺りの経緯はどうなっていたのだろうか。

博士が娘の死を知ったのは、情報収集用素体「サディケル」「カマエル」の実験中だった。
とすれば、ガブリエルを除く9体の素体には既にそれぞれの目的に応じて思考ルーチンが組み込まれ、当初の目的のために使用可能な状態になっていたと思われる。
しかし、この時点で博士には軍から娘の死が知らされていなかったのだから、最終破壊兵器「ガブリエル」はまだ未完成だ。シークレット情報にも、「未だ未完成であったガブリエルに…」とあるので、博士が娘の死を知った時にガブリエルが完全な状態でなかったことは間違いない。
ただ、この後すぐの機動部隊との戦闘で十賢者の全員が姿を見せていることからして、ガブリエルは完成間近だったのだろう。
ランティス博士がフィリアの死を知った時、ガブリエルには既に反乱軍鎮圧のための思考ルーチンが組み込まれていたと筆者は考える。なぜなら、ラスボス戦直前の主人公たちとの会話で、ガブリエルは「支配が出来なければ、全てを破滅させるまで」と言っていて、彼の中には一応、「全宇宙を支配する」という選択肢があったことがうかがえるからだ。
いずれにせよ、ガブリエルだけが未完成だったことが、その後の十賢者たちの行動に影響を及ぼしていると思われる。

十賢者たちの最終目的は、ランティス博士の手によって「辺境惑星の管理」から「全宇宙の破壊」へと書き換えられた。
そして、未完成だったガブリエルには、ランティス博士の思考ルーチンが組み込まれた。
これらの事はシークレット情報に推測として述べられているが、以下の考察は、それが真実だったとして進めていくことにする。
ガブリエルは、他の9人とは行動の基準が異なっている。
エタニティースペースから脱出した後、ガブリエル以外の9人の最終目的が「宇宙の支配」だったらしいのに対し、ガブリエルは必ずしも「支配」に固執していない。これはなぜだろうか。
筆者は、ガブリエルだけが未完成だったことがこの差を生んだと考える。
ガブリエル以外の9人は既に惑星管理用として完成していた。
機械ならともかく、彼らは生体兵器だ。最初の支配プログラムを、完全に破壊プログラムで上書きすることはできなかったのではなかろうか。
彼らの中には、実験を繰り返すうちに「宇宙を支配する」という目的が、記憶として固定化された。だから、後から「全宇宙の破壊」という目的が与えられたものの、最初からあった目的の方が優先されて、宇宙を破壊するより、まず支配しようという方向へ動いたのだと思う。
だが、ガブリエルは違う。ガブリエルとしては、とりあえず他の9人と共に全宇宙の支配を試みてはみるが、絶対にそれをやり遂げる意志は無かったようだ。
「支配など、出来なくてもよいのだ」という台詞にはどこか投げやりな感があり、「他の9人が成功すればそれでもいいが、できなければ崩壊紋章を使って全てを無に帰する」というようなつもりだったものと思われる。

以下、中編に続く。中編では、なぜガブリエルだけが他と違った行動を見せるのかを考察する。

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