|| トップページ「Star Ocean 2」十賢者>個人的想像による十賢者


前へ次へ

ガブリエルは最初、仲間の行動を静観するという消極的方法ながら全宇宙の支配に向かって行動し、同時に崩壊紋章を準備して宇宙を破壊する目的を遂げようとした。
しかし、最期に「よく私を止めてくれた」と言い、彼の最終目的であった「全宇宙の破壊」を実行したくなかったらしい節もある。彼の行動は矛盾だらけだ。
ここでは、そのガブリエルの行動に内包される矛盾について考える。

中編で、ガブリエルの中には生まれたときの経緯から、「破壊兵器ガブリエル」と「人間ランティス」との人格が共存するようになり、そのどちらもがランティス博士の記憶を持っていた、という仮説を述べた。
もっともランティス博士の人格は、しばらくの間、休眠状態だったらしい。
真ガブリエル覚醒の条件となるセントラルシティーのPAで、フィリアが「眠っていた父の意識が目覚めてしまったようです」と語っている。それまで、ランティス博士の人格は眠っていたわけだ。

セントラルシティーのPAでフィリアに出会わなければ、ランティス博士の意識は眠ったままなので、話はそれほど難しくない。ガブリエルは、ランティス博士の記憶を「破壊兵器ガブリエル」の人格が使っている状態だ。
だが、ランティス博士の人格が目覚めた場合には、ずいぶん面倒なことになったに違いない。
ラスボス戦の前後の会話から考えるに、ガブリエルとランティスと、2つの人格ははっきり分けられているわけでないらしい。
彼は「ランティス博士」と呼びかけられて訂正していないし、「全宇宙を滅ぼすことが使命であり、存在意義。その為だけに、我々は造られた」とも言っている。ガブリエルは、「破壊兵器ガブリエル」であり、「人間ランティス」であり、両方の区別が既につかない状態ではなかっただろうか。
ガブリエルの部分は兵器として命令を実行しようとし、一方ランティスの部分は、娘の死を知った絶望から世界を滅ぼそうとする。この意味で、2人の目的は一致していたはずだ。
だが、2人に迷いは無かっただろうか。
「宇宙を破壊する」という命令を果たさなければ兵器として自分の存在は無意味になってしまうと考えてはいても、ガブリエルの人間的感情が、それは間違っていると囁きはしなかっただろうか。
また、世界を滅ぼしたところで何もならないことも、そのような形で復讐を果たしたところで娘が喜ばないであろうことも、ランティス博士は知っていたに違いない。
この世を呪い、同時に娘が愛した世界を愛し、相反する2つの感情の相克に苦しみながら、自らの存在の意味を賭けて与えられた使命を忠実に果たそうとするその過程は、悲劇そのものだ。
戦闘不能時の「よくこの私を止めてくれた」という言葉が、彼らの正直な気持ちではなかったか。
実際には、ガブリエルの死をきっかけに崩壊紋章が働き、ネーデは滅亡するわけだが…

破壊兵器ガブリエルは、自らの死を崩壊紋章発動のキーに設定していた。
それは、兵器としての目的を達成するため、自分の存在が無意味でなかったと証明するための、最後の手段だったに違いない。自分が何の役にも立たぬまま終わることへの、恐怖にも似た思いがそこにはあったと思われる。
もしも、ガブリエルが「全宇宙の破壊」などという目的を与えられていなかったら?
もしもランティス博士の思考と記憶を組み込まれていなかったら?
歴史に「もしも」はありえないが、ガブリエルの生き様は、あまりにも哀れである。

次回は、ガブリエルのリミッター、天使フィリアについて考える。
前へ次へ