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前回で、「フィリアは、全宇宙の破壊を達成させないための布石」という仮説を述べた。
ランティス博士は、宇宙の破壊をガブリエルの最終目的に設定しながら、その目的を達成させないための機構を設けたわけで、博士自身、かなり混乱していたものと思われる。
あるいは、博士は迷いを捨て去れなかったのかもしれない。実際に全宇宙の破壊が実行された場合の結果を考えれば、迷うのは当然と言えよう。
そして博士の最後の良心が、ガブリエルに能力抑制機構を組み込むという形で現れた。
その役割を娘の思考ルーチンに与えたのは、フィリアが復讐など望んではいないと、博士が理解していたからだろうか。
娘の死を知った後のランティス博士の心理の移り変わりもたいへん興味深いが、それについてはとりあえず置いておこう。今回の考察対象は、フィリアの思考と記憶についてである。

我々がフィリアと呼んでいるものは、ランティス博士が作成した思考ルーチン、すなわち擬似人格プログラムとでも言うべきものだ。生前のフィリアがどんな女性だったのか、物語中で語られることはない。プログラムのフィリアは、かつて1人のネーデ人として生活していた人間フィリアと同一のものであろうか? それは絶対に違う。断言してもよい。
フィリアの思考ルーチンは、父親であるランティス博士が作成したものだ。
詳細に行動パターンを入力すれば、ある程度本人に近い思考をするものを作ることは可能だろう。しかし博士がフィリア本人でない以上、当然知らない部分もある。
従って、ガブリエルの中に在るフィリアは、あくまで「ランティス博士の目から見たフィリア」であって、それ以上でもそれ以下でもない。
それに博士が反乱を起してから鎮圧まではそれほど日数が無かったはずで、いくら細かく行動パターンのデータベース化を行おうとしても、おのずから限界はあっただろう。

さらに問題となるのは、フィリアの記憶だ。
ランティス博士は、自分の記憶をデータ化してガブリエルに組み込むことは出来ただろう。しかし、フィリアの思考ルーチンを作成した時点で、彼女は既に死んでいる。フィリア自身から記憶を取り出してガブリエルに移植することは出来ない。
娘の死を予見して前もって記憶のバックアップを取っていたはずもないから、擬似人格プログラムであるフィリアは、ガブリエルに組み込まれた父ランティス博士の記憶データベースを使用するか、ランティス博士が与えた仮の記憶を使用するかしかない。
ランティス博士を父親と認識していることを考えれば、フィリアの記憶は、ランティス博士が作った仮の記憶である可能性が高いと思われる。
博士が1日24時間娘と一緒にいられるわけもないので、仮の記憶も、やはり思考パターンの場合と同じように、ある程度のものしか作りようがない。内容はおそらく、ランティス博士が父親であるとか、簡単な生育歴、周囲の人間関係などの基本的情報にとどまっただろう。
フィリアの記憶は、ガブリエルが兵器として起動した後の事柄がほとんどということになる。

結局何を言いたいのかというと、擬似人格プログラム・フィリアは、人間のオリジナル・フィリアとは全くの別人だということだ。
一部の記憶はオリジナルと共通だし、行動パターンもオリジナルに似せて作られてはいるだろうが、プログラム・フィリアは生まれてから得た経験がオリジナルとは全く違う。
次回、一個の新たな人格である彼女が、博士の娘として取った行動の意味について考える。

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