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プログラム・フィリアが、実際に主人公たちの前に現れるのは、最大で2回。エクスペルのクリクと、ネーデのセントラルシティーでのことだ。
感情らしきものを持った擬似人格とはいえ、彼女がプログラムである以上、彼女の最終目的である「全宇宙破壊の阻止」に反する行動はとれないだろう。ランティス博士が全宇宙の破壊を失敗させるためにフィリアを組み込んだとすれば、それに反するような思考パターンを設定しておくはずはない。

まずエクスペルでのPA。
フィリアはクリクに現れ、街の人々に来るべき大地震と津波に備えて避難するように警告する。
このPAでは、彼女は十賢者たちの計画によって人が死ぬことを避けようとしているようだ。
フィリアはガブリエルの能力を抑制する働きをするだけで、直接ガブリエルの行動を操作することはできないらしい。できたら、手っ取り早く宇宙征服計画そのものを邪魔していただろう。
ただ、フィリアはガブリエルとは別に仮の肉体を持つことができるし、ガブリエルの意志と無関係に動くことができる。そこでこんな回りくどい方法でも宇宙征服計画の犠牲者が無駄に増えないようにしたかったと考えられる。

次にフィリアが主人公たちの前に姿を現すのは、セントラルシティーのPAだ。そこでフィリアは、主人公たちに自分を殺してくれと頼んでくる。
「自分を殺して欲しい」とは尋常ではない。自ら命を絶つことが出来ないようにプログラムされているので、他人の手によって殺されたいというのだから、これは実質的には自殺だ。
彼女が自殺しようとした理由は何だったろうか。
すぐ思い浮かぶのは、自分の存在がガブリエルの戦闘能力を強めることを恐れたという理由だ。
ラスボス戦でのガブリエルは、戦闘中にフィリアを召喚した後、「神曲」を使用してくる。真ガブリエル戦でフィリアを消去してリミッター解除された場合と同じ技を使うことができるのである。
ランティス博士がガブリエルに自分の思考ルーチンを組み込んだ時、彼は娘を失って狂気に支配されていたと思う。そのランティス博士の思考ルーチンが本格的に作動すれば、ガブリエルはよりいっそうの熱意を持って全宇宙の破壊を達成しようとするに違いない。
そのために自分の力が利用されるくらいならと、死を選ぶ決意をしたのだろう。

だが、それだけではないと筆者は考える。
ランティス博士が死んだ娘を模して作ったプログラムのフィリアだが、博士に彼女がオリジナルと別人であるという意識はあっただろうか。ガブリエルの行動を見ている限り、どうもプログラム・フィリアをオリジナルと同一視していたようなふしがある。
プログラム・フィリアは、本当はオリジナルとは全くの別人であるにもかかわらず、自分を自分自身として認めてもらえなかったことになる。父・ランティス博士の思考を持ったガブリエルは、彼女を見ていながら、本当はオリジナルのフィリアを見ている。それはとても辛かったに違いない。
プログラム・フィリアは、父親に自分を自分として見てもらいたかったのだと筆者は考える。
死という最後の瞬間になら、父はオリジナルのフィリアでなくて、自分の方を振り向いてくれるかもしれない。そして、ついでと言っては何だが、自らの死によってガブリエルの中の父親が、彼のもう1人の娘である自分の本当の気持ちを知り、宇宙の破壊を思いとどまってくれるのではと淡い期待を抱いたのではなかろうか。

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